2011/11/08

日本人選手の未来

もう二週間以上前のことになりますが、21歳の錦織圭が11月7日付のATP世界ランキングで、日本人では過去最高となる24位を達成しました。

それまでの最高が1992年に松岡修造が記録した46位だったことを考えれば空前の快挙だと思います。特に先日の上海およびバーゼルで、8位のツォンガ、7位のベルディヒ、そして1位のジョコビッチをたて続けに下したセンセーションは記憶に新しいところです。

錦織だけでなく、6月には当時16歳の内田海智がウィンブルドンジュニアでベスト4、9月には全米オープンで錦織、伊藤竜馬、添田豪の3人がグランドスラム本戦入り、すぐ後のデビスカッププレーオフでは日本チームはインドに勝利し、悲願のワールドグループ復帰を果たすなど、2011年は日本のテニス界にとっては重要な1年となりました。

そこで、あとは年末最終戦であるワールドツアーファイナルの結果を待つのみとなった今、2012年、そして今後の日本のテニス界について考えていきたいと思います。





錦織が示した世界へのヒント


スポーツでは、日本国内の選手とそのスポーツにおけるトップクラスの選手との間に厳然たる実力差が存在することがままあります。それはよく「世界の壁」と称されますが、テニスもその例に漏れず、ずいぶんと長い間、ATPツアーというフィールドが日本人選手の前に立ちはだかり続けてきました。

その間ツアーにおけるトレンドも他の様々な要因(特にラケットの変遷によるところが大きい)によって移り変わってきましたが、特にフェデラーが台頭した2003年以降は常にめまぐるしく変化を続けています。

サーブ&フォアの高速テニスが隆盛したかと思うと、それに対抗するかのようにカウンターとバックハンドが発展しました。現在では攻守ともに高速化した過酷なゲームに耐えうる強靭なフィジカルが要求されるようになり、選手は大型化。リターン力についても再びそのゲームにおける重要性が見直され始めています。

ではこのような世界のトレンドに対して、日本のテニスはどのように対応していかなくてはならないのでしょうか。

世界に通用する日本人選手として名前を挙げるとすればまずは錦織でしょう。私としてはグランドスラムでシードがつき、ベスト16やベスト8が見えてくる世界ランキング32位というのが、まずは存分に世界で戦えているという目安ではないかと考えています。その点現在25位の錦織は十分世界で戦えているレベルと言えます。

錦織のプレーの根幹を支えているのは、言わずもがな粘り強いフットワークと威力十分のストローク力です。特にフットワークに関しては、高速化のすすむ現代テニスにおいては重要なウエイトを占めていると言えます。

その方向性に特化して現在ランキング5位を維持しているのがスペインのフェレールですが、パワーに劣る日本人選手が一発の威力で勝負することは大変困難だと言える現状、ますますその重要性は増してきています。ストロークに関しては、自分からバンバンウィナーを取れなくとも、チャンスにはしっかり攻めてポイントをもぎ取れるだけの力が必要です。

錦織の場合、特別カウンターが上手いわけではありませんが、それでもあれだけの順位に食い込み、10位代や一桁の選手を度々喰っているわけです。無論メンタルや戦術的な強さもありますが、私としては現状日本人が世界に食らいついていくにあたって、これらの能力を備えることがその必要十分を満たすと仮定したいと思います。もちろん、選手の個性で少なからず変動は見られるでしょう。



後に続く者の課題


さて、その観点に立つと現在の他のプレーヤーはどうでしょうか。

錦織に次ぐ位置にいる添田、伊藤、杉田の3人に関しては、はまった時のストロークの威力は確かにあるのですが、それをコンスタントに発揮するだけの機動力が不足しているように感じます。例えば今年の全米での伊藤はロペス相手にストロークでウィナーが取れていましたし、いい時は攻勢を維持することもできていたのですが、ロペスの攻めに対してはそれを上回る手段がなく、あっさりポイントを奪われていたように思います。

3人とも球質は総じてフラット系なので、決めに行くショットはいいのですが、つなぎ球をしっかり攻撃されて形勢を握られる場面が多々見られます。彼らは3人それぞれプレースタイルに違いはあるものの、世界を相手にする上では同じような弱点を持っていると感じます。

彼らが今後より上位を目指すならば、とにかく相手の攻撃に対して簡単にポイントを空け渡さないことが必要で、そのためにはより俊敏なフットワークや、確実なリターンをもってして相手のフリーポイントを極力減らしていかなくてはならないのではないかと思います。

その下、さらに若手の選手はどうでしょう。

現在期待されている選手としては、内山靖崇や内田海智などが挙げられるでしょうか。彼らは現在日本のトップとして活躍している前述の選手たちとは異なり、ショットの威力やパワーを持ち味にしている選手です。

しかしながらまだまだ荒削りな部分も多く見られ、先日の全日本選手権では内山は早稲田大学の20歳、田川翔太に、内田は伊藤にそれぞれあっさり敗れてしまっています。彼らはともにジュニア時代数々の実績を残してきましたが、ジュニア卒業後にどれだけの結果を残すことが出来るかはまだまだ未知数で、よくも悪くもこれからの選手であるように感じます。

一方で先に述べた通り、今までの日本人選手にはあまりないタイプの二人ですので、このスタイルで日本人がどれだけ世界に通用するかという点では今後の活躍に大いに期待するところです。

日本人が世界のトップで戦っていくには今しばしの時間が必要かもしれません。しかしながら、現在日本のテニス界が大きな過渡期を迎えていることは確かです。今年の数々の躍進に表れているように、現在先頭を行く錦織をはじめ、若い芽は確実に育ってきています。

これまでも前述のフェレールやダビデンコ、古くはマイケル・チャンなどの活躍を通じて、世界に通用する日本人を育成するための戦略が練られてきましたが、当の日本人たる錦織がその金字塔となった今、世界に達する筋道はよりはっきりとした形で示されるようになったのではないでしょうか。



2012年、日本のテニスは?


やがて来る2012年、錦織の動向も期待されますが、それ以上に重要なことは、二番手以降の選手たちがどう世界に立ち向かっていくかということです。

今年全米への出場を果たした添田ももう27歳。選手生命の長い日本人であっても、テニス選手としては難しくなってくる歳です。彼自身はまだまだ高みに上がるつもりでいるとは思いますが、テニス界全体として見ればいつまでも添田に頼っているわけにもいきません。

同い年の伊藤と杉田はともに今季活躍しましたし、現在はややランキングも下がってしまいましたが、年齢的にも24歳になる来年は今後を考えても勝負の年になりますから、今年以上の意気込みでもって臨んでくるものと期待します。

その下の選手も内山や内田はもちろん、海外を転戦しているダニエル太郎や、どこまで世界に挑戦するのかは定かではありませんが全日本で優勝した守屋や早稲田の田川など、願わくは貪欲にステップアップの機会を狙って行って欲しいですね。

かなり大雑把なエントリーになってしまいましたが、選手の育成に関するより具体的な問題などは次回以降にまた取り上げたいと思っています。来年はデビスカップもワールドグループでの戦いが見られますし、また日本のテニスファンをワクワクさせてくれる一年になってほしいものですね。

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