2013/01/06

ついにディミトロフも来た!


いや~、盛り上がってますね、ブリスベン国際。
準決勝で無念のリタイアとなってしまったものの、錦織の安定した活躍には将来の展望が見えましたし、決勝でのマレーのプレーにも五輪・GSチャンプとしての意地を感じて大変良かったと思います。

でも今回の主役は錦織でもマレーでもありません。

2008年のプロ転向以来、来るぞ来るぞと言われていながらなかなか思うようなブレイクを果たせずにいたディミトロフが、ついにその潜在能力を開花させ始めたのです!


『フェデラーの後継者』と呼ばれた男


ディミトロフはブルガリア出身の21歳。2008年にジュニアのウィンブルドンとUSオープンを制し、本格的にツアー参戦を始めました。もともと才能に関しては高い前評判を誇っていた選手で、厚グリ・両手バックハンド全盛のジュニアにおいて、非常に薄い握りと片手バックハンド、柔らかなフォームから『フェデラーの後継者』と呼ばれ注目を集めていました。

似ていると言われるフェデラーとの対比(フォアハンド)。
動画ではイマイチだが、写真だと確かに酷似している。


ディミトロフは若干ながらダブルベンド気味で、打点と軸も後ろ寄り。
フェデラーは手首のコックがより大きく、ヘッドが走る。

とはいえ、そんな彼もジワジワとランキングは上げるもののこれまでなかなかブレイクできず、実は100位を切ったのも2011年になってからです。昨年はクイーンズで準決勝まで(ナルバンディアンに敗退)進んだものの、その他目立った活躍はありませんでした。それでも11月にはランキング50位を切ったりもしていますから、さすがといったところではあります。そんな彼が2013シーズンの幕開けである今大会で予想を上回る活躍を見せたのですからこれは期待しないわけにはいきません。



持ち味は「足の速さ」「1stサービス」「ショット選択」


それでは早速プレースタイルを分析していきたいと思います。
彼は一言で言えば、非常にバランスの良い選手であると言えます。その中でも特に今回効果的にはたらいていたのが、なんといっても足の速さと強力な1stサービス、そしてショット選択の巧みさでした。

ひとつひとつ具体的にみていきます。まず「足の速さ」。

ディミトロフのプレーを見ていて私が真っ先に抱いた感想がこれです。とにかく足が速い。フットワークや身のこなし自体はそれほど洗練されている感じはしないのですが、直線的なスピードとコートカバーリングの広さには正直驚きました。相手がディミトロフを大きく振り回しても、しっかり追いついて相手コート深くボールを返す。ドロップショットにも素早く反応して切り返す。今回これがバグダティス戦やマレー戦ではよく出ていたと思います。

身体も非常に柔らかく(むしろ柔らかすぎるぐらい)、深く重心を下げた状態での返球は印象的でした。

膝がかなり柔らかいのか、やけに重心が低い。

サービスは2回戦で対戦したラオニッチのような凄まじさはありませんが、1stサービスに関しては今大会高いパフォーマンスを発揮していました。決勝こそリターン巧者のマレーに抑えこまれてしまいましたが、それまでの4試合ではコンスタントに2桁のエースを記録し、サービスウィナーも多く引き出していましたね。ブレイクポイントなどの緊迫した場面でもいいところに打てているなど、効果的に使えていたと思います。サービスによるフリーポイントがある程度見込めると、試合全体に対するプレッシャーが大分変わってきますから、今後も武器になってくれることでしょう。

最後はショット選択の巧みさです。

これはどういうことかというと、必要な場面で適切なショット選択を行うことができているということです。特に今大会ではバックハンドのスライスがキレていましたから、スピンとスライスの使い分けを基軸として、コース選択含めバックハンドから多様な展開をつくることができていました。度々繰り出されるドロップショットも効果的でしたね。

また全体として攻撃と守備の切り替えがよく、無理をした攻めや中途半端な守備でポイントを落とすことが少なかったように思います。ディミトロフのバックハンドはグリップも非常に薄いことから度々ムーンボールを使われる場面がありましたが、無理せず深いスライスで返球することでそこから攻撃の起点を作ることを封じていました。

加えて全体的に返球のテンポが早く、ライジング気味にラリーをしていくなかで先に相手がミスしてしまうという場面も少なからずありました。攻めるべき場面で思い切りよく叩いていけたことも高評価です。




まずはフットワーク強化、王道パターンの確立を


さて、そんなディミトロフですがもちろん良い所ばかりではありません。次は私の目に留まった改善点について触れていきたいと思います。


まずせっかく足が早いのに、フットワークや身のこなしがぎこちないこと。

トップ4をはじめとして、コートカバーリングの良い選手は大抵安定した足運びをするものですが、ディミトロフはこの辺りがまだ洗練されていません。特にボールに入る動きがバタバタした感じで慌ただしさが感じられますし、打球時の上下動や上体のブレも散見されます。

それでも良いボールを打てているのは彼のセンスの賜物なのでしょうが、この点が改善されれば鬼に金棒でしょう。この辺りを強化することの実効性は2011年暮れの錦織の躍進にもよく表れています。


もう1つは攻撃の王道パターンがまだ確立していないように思われることです。

ディミトロフは割となんでも器用にこなせるタイプの選手で、そこが穴の無さにもつながっていますが、攻め手として是非「このパターンに持ち込めればポイントをもぎ取れる」というパターンがほしいところです。

例えば錦織。彼は大抵の選手に対して、バックのクロスラリーからの展開でラリーを優位に進めることができます。そこから回りこんでの逆クロスもありますし、フォアとバック両方でライジングでのダウン・ザ・ラインを打つことができます。それが彼のウイニングショットであり、王道パターンなわけです。フェデラーであれば余裕を持ってフォアに回り込めさえすれば、そこから早いタイミングでの連続攻撃が始まりますし、それを凌ぎきるのは至難の業です。このようなパターンをなんとか確立したいものです。


あとは瑣末なものですが、不用意なアプローチショットがちらほら目立ちます。なぜか錦織も多いのですが、しっかり構えて打てさえすればアプローチが深くとももの凄いパスが飛んでくる時代ですから、この辺でみすみすポイントを失わないようにしたいものです。



やはり潜在能力は高い!引き続き注視すべき選手


今大会を見てみてのディミトロフ評はざっとこんなものでしょうか。ラウンドを上げるごとにプレーのレベルも増していったあたりは典型的なブレイクの兆しといえると思います。決勝ではかなりハイレベルのプレーを見せ、マレーからあわや1stセットをもぎとろうかといったところでしたが、その終盤あたりからやや集中力が切れてしまったのが残念でした。


しかし内容はこれまで後塵を拝していたラオニッチや錦織にも迫ろうという素晴らしいもので、今後このようなプレーが続けられればやはりまずはトップ20、あわよくばトップ10を狙っていきたいところです。公式プロフィールの数値(身長188cm、体重77kg)や表彰式でマレーと並んだ写真などからすると、まだフィジカル的にも成長の余地はありそうですし、これであれだけのクオリティのプレーをするのですから将来トップ争いの一角を狙うだけの素質は持ち合わせていると思います。

今までは正直あまり好きな選手ではなかったのですが、今大会でのプレーを見て一気にファンになりそうな勢いです(おい)。ビジュアル的にも十分ですから、今後人気も出ることでしょうし、今シーズンは注目ですよ!

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